ペースメーカー

ペースメーカー費用はいくら?入院期間・保険・自己負担のすべてを解説

ペースメーカーの植込み手術は、心臓のリズムを整えるために欠かせない大切な治療です。
しかし実際に手術を受けるとなると、最も気になるのが「費用はいくらかかるのか」「保険は適用されるのか」「入院期間はどのくらいか」という点ではないでしょうか。

私は臨床工学技士として、心臓ペースメーカーの植込みや点検業務に携わっています。
この記事では、医療現場での実際の経験をもとに、ペースメーカーの費用・入院の目安・保険適用の仕組みをわかりやすく解説します。

ペースメーカーとは?基本構造と役割

心臓は電気信号によって規則的に拍動していますが、その信号がうまく伝わらないと「徐脈」や「不整脈」が生じ、脳や全身への血流が不足します。
ペースメーカーは、心臓の動きをモニターしながら、必要なときに電気刺激を送ってリズムを整える医療機器です。

ペースメーカーは主に以下の部品で構成されています。

  • 本体(パルスジェネレーター):電池と電子回路が内蔵された心臓のリズムを制御する装置
  • リード線:本体から心臓に伸びる細い電線で、電気信号を送受信する

これらを鎖骨の下に埋め込み、リードを静脈を通じて心臓内に留置します。
手術時間は1〜2時間程度で、局所麻酔下で行われます。

ペースメーカーの費用はどれくらい?

ペースメーカー本体の価格は、機種や機能によって大きく異なります。
本体価格に加えて、手術料・入院費・検査料などがかかります。

ペースメーカー本体の価格目安

機種の種類本体価格(目安)主な特徴
シングルチャンバー(1本リード)約60〜80万円基本的な心室刺激型
デュアルチャンバー(2本リード)約90〜120万円心房・心室の連動制御が可能
CRT(両室ペーシング機能付き)約200〜250万円心不全治療を併用する高機能モデル

このほか、入院・手術費用・検査代などを含めると、全額自己負担の場合は300〜400万円程度が相場です。
ただし、実際は公的医療保険が適用されるため、ここまでの負担になることはほとんどありません。

ペースメーカー手術は保険適用される?

はい。ペースメーカー植込み術は健康保険の対象です。
保険証を提示すれば、医療費は以下の割合で自己負担となります。

年齢・条件自己負担割合
70歳未満3割負担
70〜74歳(一定所得以上)2割負担
75歳以上(後期高齢者)1割負担

保険適用後の費用目安

年齢層自己負担額の目安
70歳未満(3割負担)約30〜40万円前後
70歳以上(1〜2割負担)約10〜25万円前後

この金額からさらに「高額療養費制度」を活用すれば、実際の支払いは大幅に下がります。

高額療養費制度を利用すれば実質8万円前後に

高額療養費制度とは、1か月あたりの医療費が一定額を超えた場合に、その超過分を国が補助してくれる制度です。
申請をすれば、自己負担額は8万円前後まで軽減されるケースが多くあります。

所得別の上限目安(70歳未満)

所得区分月額自己負担の上限(目安)
年収約770万円〜約15万円+α
年収約370〜770万円約8万円+α
年収約370万円未満約5〜6万円程度

たとえば、総額で100万円の医療費がかかったとしても、
高額療養費制度を利用すれば実際の自己負担は8〜9万円程度に抑えられる計算です。

70歳以上の方はさらに上限が低く、所得によっては月2〜4万円台まで軽減されます。

入院期間の目安とスケジュール

ペースメーカー植込み術の入院期間は、病院や体調によって異なりますが、おおよそ5〜10日間が一般的です。

入院の流れ(例)

入院日内容
1日目検査・手術前説明(心電図・血液検査・レントゲン)
2日目ペースメーカー植込み手術(局所麻酔・1〜2時間)
3〜5日目傷の確認・リード位置確認・出力設定調整
6〜7日目プログラミング確認・退院前検査
7〜10日目退院(外来フォローアップへ移行)

退院後は、3〜6か月ごとに定期検診を受け、電池残量やリードの状態を確認します。

手術費用の内訳(3割負担の場合)

以下は一般的な病院の概算です。

費用項目目安金額
ペースメーカー本体・リード約90,000〜120,000円
手術・技術料約100,000円前後
検査・心電図・レントゲン等約50,000円前後
入院料・食事約50,000〜70,000円
合計(自己負担額)約30〜40万円前後

高額療養費制度を適用すれば、実質負担は8〜10万円程度に軽減されます。

ペースメーカー交換時の費用と注意点

ペースメーカー本体には電池が内蔵されており、寿命はおよそ7〜10年です。
電池が減ってきたら「交換手術」を行います。

この場合はリード線を残して本体だけを交換するため、
手術時間は短く(1時間以内)、入院期間も3〜5日程度です。

費用も初回植込みより安く、保険適用後の自己負担は約5〜15万円程度となります。

費用を抑える3つのポイント

① 限度額適用認定証を提出

入院前に「高額療養費制度の限度額適用認定証」を発行しておくと、
窓口での支払いが最初から上限額までに抑えられます。

② 医療費控除を活用

1年間に支払った医療費が10万円を超える場合は、確定申告で控除が受けられます。

③ 医療保険・入院保険を確認

民間の医療保険に加入している場合、「手術給付金」や「入院日額」が支給されることがあります。
内容によっては、実質的な自己負担ゼロも可能です。

手術後のフォローアップ費用

ペースメーカー植込み後は、定期的な通院で状態をチェックします。
臨床工学技士や医師が機器を専用端末で読み取り、出力やリード抵抗を確認します。

  • 通院頻度:3〜6か月に1回
  • 所要時間:10〜20分程度
  • 費用:1回あたり2,000〜3,000円(保険適用後)

在宅型の遠隔モニタリング機能がある機種の場合、自宅でデータ送信できるため通院回数が減るケースもあります。

ペースメーカー費用まとめ

項目内容
手術費用(3割負担)約30〜40万円前後
高額療養費制度適用後約8〜10万円程度
入院期間約5〜10日間
保険適用公的医療保険(1〜3割負担)
交換手術費用約5〜15万円前後

ペースメーカー植込み手術は、決して安くはありませんが、
保険・公的制度を正しく利用することで負担を大きく減らすことが可能です。

そして、ペースメーカーは植込み後の生活を大きく支え、命を守る心強いパートナーになります。

不安を抱える方は、ぜひ主治医や病院の医療相談窓口、臨床工学技士に相談してみてください。

執筆者情報

執筆者:Y(臨床工学技士)
臨床工学技士として大学病院・クリニックに勤務。
心臓ペースメーカー・ICD・透析装置などの管理・点検業務に従事し、数多くの患者さんと関わってきた経験を持つ。
「医療をわかりやすく、安心できる言葉で伝える」をモットーに、現場目線で医療記事を執筆中。

📌 注意事項
本記事は一般的な医療情報をもとに作成しています。
実際の費用や入院期間は病院・保険の種類・体調によって異なります。
詳細は必ず医師または医療機関にご確認ください。