臨床工学技士の中でも「透析」は中心的な業務
臨床工学技士と聞いて、まず思い浮かべるのは人工心肺装置やペースメーカーの操作かもしれません。しかし、実際に多くの技士が日常的に関わっているのが「透析業務」です。
臨床工学技士は、医療機器のスペシャリストとして、呼吸・循環・代謝といった生命維持に関わる分野で活躍します。その中でも**血液透析(HD)**は、患者数が多く、病院やクリニックなどさまざまな施設で必要とされる代表的な業務です。
透析は、患者さんと継続的に関わる仕事でもあり、機器管理だけでなく人と人との信頼関係が大切になります。だからこそ、やりがいや責任感も大きいんですよね!
臨床工学技士の透析業務とは?
臨床工学技士が透析業務で担当するのは、主に以下のような内容です:
- 透析装置の準備・点検・保守管理
- 回路(血液回路や透析液ライン)のセッティング
- 穿刺補助(施設の方針による)
- 透析中の装置監視・トラブル対応
- 終了後の装置洗浄・記録作成
透析装置は命に関わる機器であるため、ミスは許されません。だからこそ、臨床工学技士の正確な判断力・観察力・対応力が求められるのです。
また、患者さんの血圧や体調の変化に注意を払いながら、看護師や医師と連携し、チーム医療の一員として動くのも大きな役割のひとつです。
透析装置の種類と特徴
透析業務において使用される装置にはいくつかの種類があります。代表的なものが以下のとおりです:
- HD(血液透析):最も一般的。体内の老廃物や余分な水分を除去。
- HDF(血液濾過透析):HDに加えてより多くの中分子物質を除去可能。
- CAPD(腹膜透析):自宅で行う透析で、臨床工学技士は主に装置管理に関与。
それぞれの透析方式に適した設定やメンテナンスが求められるため、技士としての知識の幅広さが求められます。
臨床工学技士の1日の流れ(透析業務の場合)
透析業務の1日は、患者さんの透析スケジュールに合わせて進みます。主な流れは以下のようになります。
【早番・日勤の例】
- 7:30〜8:00 出勤・透析装置の立ち上げ、点検
- 8:30〜11:00 1クール目開始/回路準備・穿刺補助・装置操作・監視
- 11:30〜14:00 2クール目対応
- 14:30〜17:00 3クール目対応/機器洗浄・保守・記録
- 17:30〜18:00 退勤(遅番と引き継ぎ)
施設によっては、夜間透析を行うところもあり、早番・遅番・準夜勤などのシフト勤務になることもあります。透析はほぼ毎日行われるため、安定した勤務スケジュールが組みやすい一方、繁忙期や患者急変時の対応には柔軟性も必要です。
透析業務ならではのやりがい・大変さ
透析業務の魅力の一つは、患者さんと継続的な信頼関係を築けることです。透析は週に2〜3回、数時間をかけて行う治療。患者さんの体調や生活背景を把握し、寄り添いながらサポートしていく中で、感謝の言葉を直接いただける機会も多くなります。
その一方で、
- 穿刺のサポートが求められる場合がある(神経を使います)
- 装置トラブルの即時対応が必要
- 急変対応や長時間の立ち仕事もある
など、精神的・肉体的な負荷もある仕事です。ですが、それだけに「この仕事に就いてよかった」と感じる場面もたくさんあるんですよ。
就職活動や実習でのアピールにもつながる透析の知識
臨床工学技士を目指す学生にとって、透析業務への理解は就職活動において大きな武器になります。透析装置は多くの施設で導入されており、採用面接では「透析に関してどんな学びをしてきたか?」と聞かれることも少なくありません。
実習中は、以下のポイントを意識して取り組むと評価が高まりやすいです:
- 透析の原理と装置構造を理解しているか
- 積極的に装置の立ち上げや洗浄に関わっているか
- 患者さんとの接し方に丁寧さがあるか
- トラブル時の対応や報告の正確さ
透析業務は「見るだけ」になりがちですが、自ら質問したりメモを取る姿勢が非常に重要です。
透析以外に臨床工学技士が関わる業務とは?
透析業務は臨床工学技士の代表的な仕事の一つですが、それだけではありません。
- 人工心肺装置の操作(心臓手術時)
- ペースメーカーのチェック・プログラミング
- 内視鏡システム・高気圧酸素治療装置などの操作
- ME機器全般の保守・点検・トラブル対応
など、医療機器の進化に応じて活躍のフィールドはどんどん広がっています。
「まずは透析業務で経験を積み、その後ほかの分野にステップアップ」というキャリアパスを選ぶ技士も多いですよ!
まとめ:臨床工学技士を目指すなら透析業務の理解は必須!
臨床工学技士を目指す上で、「透析」は避けて通れない分野です。
多くの現場で求められており、専門性が高く、患者さんと関われる実感のある仕事。機器のスペシャリストとしてのスキルはもちろん、人間力も磨かれる現場といえるでしょう。
学生のうちから透析の仕組みや業務内容を理解しておくことで、実習や就職後の適応力にも差がつきます。
「人の命を支える医療機器のプロになりたい」そんな思いがあるなら、まずは透析業務を深く知ることから始めてみてくださいね!